水簾洞ブログ
張梢、詩を詠うのこと
2017年 平成29年 迎春
本年もよろしくお願いいたします。
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西遊記 小野忍訳
張梢、詩を詠うのこと 岩波文庫
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船は緑水煙波の内に停め
家は深山曠野の中に住む
偏に愛す 渓橋に春水の漲るを
最も憐む 岩崛に暁雲の蒙るを
龍門の鮮鯉を時に煮て
虫蛙の乾柴を日 焚く
釣と網 共に老いを養うに堪え
柴と縄の二事 終りを安んず可し
小舟に仰に臥て 雁の飛ぶを観
草径に立止まり 鴻の啾を聴く
口舌の場の中に 我が分は無く
是非の海の内に 吾が踪を少く
渓辺に掛け晒せば 絹は錦の如く
石上に重ねて磨けば 斧は鉾の以し
秋月暉暉として 常に孤り釣り
春山寂寂として 人に逢う没し
魚多れば酒に換えて 妻と同に飲み
柴剰れば壺を活って 子と共に憩
自ら唱い自ら斟んで 放蕩に隨い
長歌長嘆して 瞋風に任す
兄を呼び弟を喚んで 仲間を迎え
友を契れ朋を携えて 野翁を聚む
行令猜拳して 頻に盞を伝う
蝦を烹 蟹を煮て 朝朝楽しく
鴨炒め 鶏を炙って 日日豊か
愚妻茶を煎れば 情散淡
山妻飯を造れば 意従容
暁来になれば杖を挙げて 径浪を覗く
日出になれば柴を担いで 大街を過る
雨の後には簔を着て 活鯉を獲り
風の前には斧を取って 枯松を伐る
踪を潜め世を避けて 痴愚を妝い
姓を隠し名埋めて 啞しと作る
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口舌(ごたごた)是木非(いざこざ)壺(徳利)
放蕩(勝手気まま)瞋風(もの狂い)朝朝(毎日)
日日(毎日)情散淡(心のんびり)意従容(気持ちゆったり)
杖(釣り竿)径浪(露のしずく)大街(大通り)痴愚(馬鹿)
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